離れて暮らす親のことが気になり始めると、転倒を知らせる機器や見守りサービスを先に探したくなるかもしれません。
ただ、家の中には、物の置き方や照明を見直すだけで歩きやすくなる場所もあります。大がかりな工事や機器の購入を考える前に、まずは親が普段歩く場所を一緒に確認してみましょう。
最初に、寝室からトイレまでの夜間動線を親と一緒に歩き、床・明るさ・手をつく場所を確認します。転倒が続く、歩き方が変わった、めまいや痛みがある場合は、片づけだけで済ませず専門職へ相談してください。転倒後に自力で連絡できない心配が残る場合は、住環境対策とは別に緊急通報サービスを検討します。
この記事で分かること
- 高齢の親の家で確認したい、転びやすい場所
- 機器を買う前にできる住環境の見直し方
- 親の暮らしを尊重しながら進める順番
- 家族だけで判断せず、相談したいケース
転倒対策は「いつもの動線」から確認する
家全体を一度に片づける必要はありません。最初に見たいのは、親が毎日通る場所です。
たとえば、玄関から居間、居間からトイレ、寝室からトイレ、台所から食卓までの道筋です。床に物がなくても、敷居の小さな段差、めくれたマット、電気コード、暗い曲がり角などが歩きにくさにつながる場合があります。
確認するときは、家族だけで危険と決めつけず、親に「ここを通るとき、歩きにくくない?」と聞いてみます。長年の置き場所には親なりの理由があるため、勝手に物を捨てたり家具を動かしたりしないことが大切です。

最初に見る3つの視点
| 見る視点 | 確認すること |
|---|---|
| 床 | 段差、マット、コード、新聞や荷物が通り道にないか |
| 明るさ | 足元や曲がり角が見えやすいか、電球が切れていないか |
| 支え | 立ち上がるときに、不安定な家具へ手をついていないか |
転倒には、住環境だけでなく体調、視力、服薬、履物など複数の要因が関係することがあります。家を整えれば事故を必ず防げるわけではありませんが、暮らしの中にある気がかりを減らす一歩にはなります。
場所別に見る、転びやすいポイント
玄関は段差と靴の置き方を確認する
玄関では、上がりかまちの段差、たたきに出たままの靴、滑りやすいマットなどを確認します。
靴を履くときにふらつきやすい様子があれば、安定した椅子を置けるか相談してみましょう。ただし、椅子自体が通路を狭くしたり、ぐらついたりしないことも確認します。
玄関の手すりは、壁の下地や使う人の動きに合わせた設置が必要です。賃貸住宅では契約条件もあるため、自己判断で取り付けず、管理会社や施工の専門家などへ相談してください。
廊下と階段は「置かない・暗くしない」
廊下は収納の一部になりやすく、箱、古新聞、掃除道具などが一時的に置かれがちです。壁際に寄せていても、夜間や急いでいるときには足が当たることがあります。
階段では、踏み面に物を置かないことに加え、照明のスイッチへ無理なく手が届くか、手すりがぐらついていないかを確認します。階段の上端や下端に敷物がある場合は、ずれやめくれも見ておきましょう。
居間はラグと電気コードに注意する
居間では、ラグやカーペットの端、こたつ布団、延長コードなどが足に触れやすくなります。ラグを使い続けたい場合は、ずれやめくれがないかを親と一緒に確認します。
電話や充電器のコードが通路を横切っているなら、家具の配置やコンセントの使い方を見直せないか考えます。たこ足配線や電源まわりは火災など別の危険もあるため、無理な配線変更はせず、必要に応じて電気工事の専門家へ相談してください。
寝室からトイレまでの夜間動線を見る
昼間は問題がなくても、夜になると家具の角や小さな段差が見えにくくなります。寝室からトイレまでを実際に夜の明るさで歩き、足元が見えるか確認してみましょう。
枕元から照明をつけられるか、廊下までの通路に荷物がないか、寝具が床へ広がっていないかも確認したい点です。足元灯を使う場合は、まぶしすぎず、歩く方向や床面を確認できる位置を検討します。

浴室・洗面所・トイレは濡れと立ち座りを確認する
浴室や洗面所は床が濡れやすく、居室との温度差も生じやすい場所です。水滴を拭ける状態か、バスマットがずれたり端からめくれたりしていないかを確認します。
浴槽をまたぐ動作やトイレでの立ち座りに不安がある場合、手すりや福祉用具が選択肢になることもあります。ただし、設置位置や高さは人によって異なります。家族だけで決めず、本人の希望を聞いたうえで、地域包括支援センターや福祉用具の専門職などへ相談すると整理しやすくなります。
台所は床の物と高い収納を見直す
台所では、床に置いた食品やごみ箱、足元のマットが動線を狭めていないか確認します。
高い棚の物を取るため、椅子や不安定な踏み台へ乗っていないかも聞いてみましょう。よく使う物を腰から目線ほどの高さへ移せると、無理な上り下りを減らせる場合があります。
親と揉めにくい見直し方は「一緒に一か所」
子どもには危なく見える場所でも、親にとっては長年使ってきた落ち着く家です。「危ないから全部変えよう」と進めると、監視された、暮らしを否定されたと感じるかもしれません。
危険を指摘するより、困りごとを尋ねる
「このマットは危ない」と断定するより、「最近、歩くときに気になる場所はある?」と聞くほうが、親の感覚を確認できます。
見た目だけで判断せず、いつ、どのようにその場所を使っているかを聞いてください。物を移す場合も、親が後で探さずに済む置き場所を一緒に決めます。
一度に変えず、元へ戻せる工夫から試す
最初は、通路の荷物を一つ移す、切れた電球を交換する、よく使う物を取りやすい棚へ移すといった小さな見直しで十分です。
変更後は、かえって使いにくくなっていないかを親に確認します。家具の移動によって新しい角や狭い通路ができることもあるため、整えた後にもう一度歩いて確かめましょう。
見直しだけでは足りない場合と相談先
次のような場合は、住環境の片づけだけで対応しようとせず、本人の同意を得ながら相談先を探します。
- 短い期間に転ぶことが続いている
- 立ち上がりや歩行の様子が以前と変わった
- めまい、ふらつき、強い痛みなどを本人が訴えている
- 手すりの設置や住宅改修を検討している
- 家族だけでは安全な動線を判断しにくい
体調や服薬が気になる場合は、薬を家族の判断で中止・変更せず、本人から医師や薬剤師へ相談してください。介護や住まいの相談先が分からないときは、親の住所を担当する地域包括支援センターが窓口の一つになります。
状況別の次の一手
| 確認した状況 | 優先する対応 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 通路の物、めくれたマット、暗さが気になる | 親の同意を得て、一か所だけ元へ戻せる方法で見直す | 変更後に同じ動線をもう一度歩く |
| 立ち座りや歩行が以前と変わった | 医療・介護の専門職へ相談する | 地域包括支援センターの調べ方 |
| 手すりや住宅改修を考えている | 設置場所を家族だけで決めず、専門職へ相談する | 本人の動作、住宅条件、利用できる制度 |
| 転倒後に電話やボタン操作ができるか心配 | 普段の持ち歩き方と通信環境を確認する | 緊急通報ボタンの導入前チェック |
| 家族がすぐ行けず、現地対応も必要 | 駆けつけ条件と対応範囲を比較する | ALSOK・セコムの駆けつけ比較 |
地域包括支援センターの探し方は、親の住所を管轄する地域包括支援センターの調べ方で確認できます。
転倒した直後は無理に起こさない
親が転んだと連絡してきた場合や、目の前で転倒した場合は、慌てて立たせず、意識や呼吸、出血、痛み、頭を打った可能性などを確認します。
意識がない、呼吸がおかしい、大量に出血している、強い痛みがあるなど緊急性が疑われる場合は、119番へ連絡してください。事件や事故で警察の対応が必要な場合は110番です。判断に迷う場合は、利用できる地域であれば救急相談窓口などへ相談します。
見守り機器は異変を知る手がかりになる場合がありますが、転倒そのものを防ぐとは限りません。購入を考える場合も、通知先、通信環境、設置場所、月額料金、解約条件などを公式情報で確認し、住環境の見直しと分けて考えることが大切です。
事業者が実際に駆けつけてくれる仕組みを検討する場合は、緊急通報の駆けつけ、実際に来てくれるのは誰?ALSOK・セコム比較もあわせてご覧ください。
次にすることは「寝室からトイレまで歩く」
次に実家へ行ったときは、親と一緒に寝室からトイレまで歩いてみてください。できれば昼だけでなく、夜の明るさでも確認します。
そこで見つけた物を全部変える必要はありません。まず一つ、親も納得できる場所を見直すことから始めましょう。高齢者の家の転倒対策は、家族が正解を押しつけるのではなく、本人が今の暮らしを続けやすい形を一緒に探すことが出発点です。

