「自分の親なら、家族の声くらい分かるはず」と思っていても、電話の声だけで相手を見分けるのは簡単ではありません。体調不良や事故などを突然告げられれば、誰でも落ち着きを失うことがあります。
そこで家族を名乗る電話への備えとして考えたいのが、親子だけで共有する合言葉です。
ただし、合言葉さえあれば安心というわけではありません。大切なのは、合言葉をきっかけに不審な電話を止め、いつもの連絡先へかけ直す習慣をつくることです。
合言葉に正しく答えられても、その電話の中でお金・カード・暗証番号・個人情報の話を進めません。「一度切る」「以前から登録済みの番号へ自分からかけ直す」「確認できなければ家族や相談先へ連絡する」を一組のルールにします。
この記事で分かること
- 家族の合言葉を決めるときの条件
- 推測されやすく、合言葉に向かない言葉
- 家族を名乗る電話が来たときの対応手順
- 合言葉を忘れやすい親への別の備え方
合言葉は「本人確認の決め手」ではなく、電話を止めるきっかけにする
最初に家族で共有しておきたい結論は、合言葉だけで相手を信用しないことです。
家族しか知らないつもりの言葉でも、日常会話やSNS、親族とのやり取りなどから、第三者に知られる可能性はあります。また、電話をかけてきた相手が、親の口から合言葉を聞き出そうとすることも考えられます。
そのため、家族を名乗る相手が合言葉に答えられた場合でも、その電話の中でお金や個人情報の話を進めないルールにしておく方が安心です。
合言葉の役割は、次のように整理できます。
- いつもと違う電話に気づくきっかけにする
- 慌てたまま話を進めず、一度立ち止まる
- 電話を切り、登録済みの番号へ確認する行動につなげる
「合言葉に答えたから本人」ではなく、「合言葉を確認したら、いったん切ってかけ直す」と覚えておくのが基本です。

家族の合言葉は4つの条件で決める
合言葉は、難しすぎると家族も思い出せません。反対に、誕生日やペットの名前のように身近すぎる言葉は、相手に推測される可能性があります。
親子で決めるときは、次の4つを目安にすると整理しやすくなります。
1.家族以外が推測しにくい
生年月日、住所、電話番号、出身校、飼っているペットの名前などは避けます。年賀状やSNS、名簿などから分かる情報は、合言葉に向いていません。
家族だけが覚えやすい言葉を選ぶ場合も、公開している思い出や親族が広く知っている情報ではないか確認しましょう。
2.親が聞き取りやすく、答えやすい
長い文章、似た音が続く言葉、外来語ばかりの表現は、電話では聞き取りにくいことがあります。短く区切れて、普段の言葉で発音できるものが向いています。
難しい暗号にするより、親が慌てたときにも思い出せることを優先します。
3.質問と答えをセットにする
単語を一つだけ決めるのではなく、「家族が質問し、電話をかけた側が答える」という形にすると、使う場面が分かりやすくなります。
ただし、実際に使う質問と答えを、人目につく場所やSNSへ書くのは避けます。この記事にある例文をそのまま合言葉として使うのではなく、各家庭で別の内容を考えてください。
4.合言葉を口にした後の行動も決める
合言葉そのものより重要なのが、その後の手順です。「答えが合っても、その電話はいったん切る」「家族のいつもの番号へ自分からかける」までを一組のルールにします。
| 決める項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 合言葉 | 短く、聞き取りやすく、公開情報から推測しにくいか |
| 質問する人 | 電話を受けた親が質問する形になっているか |
| 電話の切り方 | 「確認してから折り返す」と言って切れるか |
| 確認先 | スマートフォンや電話帳に登録済みの番号があるか |
| 相談先 | 本人と連絡が取れない場合に、次に連絡する家族を決めたか |
家族を名乗る電話が来たときは4段階で確認する
合言葉を決めても、使い方を一度も試していないと、とっさに思い出せないことがあります。次の順番を親子で確認しておきましょう。
1.名前を言わせ、合言葉を質問する
相手が「オレだけど」「わたしだよ」と言っても、親の側から家族の名前を出さないようにします。「どちらさまですか」と聞き、相手に名乗ってもらいます。
合言葉を確認するときも、親の方から答えを口にしないことが大切です。答えを誘導するような質問ではなく、事前に決めた質問だけを使います。
2.急かされても、その場で返事をしない
「今日中にお金が必要」「電話番号が変わった」「会社の人が取りに行く」などと言われても、その電話の中で承諾しないようにします。
お金、キャッシュカード、暗証番号、口座情報などの話が出たら、合言葉に関係なく一度電話を切って確認します。家族が代理で金融手続きを進める場合も、本人の意思や金融機関の正式な手順を確認する必要があります。
3.以前から登録してある番号へかけ直す
相手が伝えてきた新しい番号には、すぐかけないようにします。親のスマートフォンや電話帳に前から登録してある本人の番号へ、親からかけ直します。
「携帯電話をなくした」と説明された場合でも、ほかの家族や勤務先など、以前から把握している連絡先を使って確認します。電話を切らずに別の番号へ転送してもらう方法は避けた方がよいでしょう。
4.確認できないときは一人で判断しない
本人と連絡が取れない場合に備え、次に相談する家族を一人決めておきます。近くに暮らす親族や、日頃から連絡を取り合う人でも構いません。
詐欺かもしれない電話を受けた段階では、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署へ相談できます。現に金銭を渡そうとしている、不審な人物が訪問しているなど、急を要する場合は110番へ連絡してください。

合言葉を忘れそうな親には、無理に覚えてもらわない
合言葉は、すべての家庭に向く対策ではありません。新しい言葉を覚える負担が大きい親や、電話で複数の手順をこなすのが難しい親には、かえって混乱を招く場合があります。
また、耳が聞こえにくいと、正しい答えでも聞き間違えることがあります。親が合言葉を使いたくない場合は、無理に押しつけないことも大切です。
その場合は、より単純なルールへ切り替えます。
- 知らない番号からの電話には出ない
- 家族を名乗る電話でも、一度切る
- お金の話が出たら、決めた家族へ連絡する
- 固定電話は留守番電話を基本にする
電話のそばにメモを置くなら、合言葉そのものではなく、「お金の電話は一度切る」「○○へ確認する」といった行動を書きます。確認先の電話番号は、普段から使っている番号と照らし合わせておきましょう。
固定電話への不審な着信が気になる場合は、高齢の親の固定電話を留守番電話中心にするメリットと注意も参考になります。
電話のそばに置く30秒対応メモ
- 「お名前をもう一度お願いします」
- 合言葉の質問をする。ただし答えをこちらから言わない
- 「確認してから、こちらからかけ直します」と言う
- 電話を切り、前から登録してある番号へかける
- お金・カード・暗証番号の話が出たら、一人で決めない
急かされても、この順番は変えない。
合言葉を使わない方がよい場合
| 親の状況 | より単純な備え |
|---|---|
| 合言葉や複数手順を覚えることが負担 | 家族を名乗っても一度切り、登録済み番号へかけ直す |
| 電話の声を聞き取りにくい | 知らない番号には出ず、留守番電話で用件を確認する |
| 電話を切ることを相手に遠慮してしまう | 「家族との決まりです」と書いた対応メモを電話のそばに置く |
| 不審電話が繰り返し届く | 固定電話を留守番電話中心にする設定を確認する |
一度決めた合言葉は、短い電話練習で習慣にする
合言葉は、決めただけでは使えるとは限りません。家族から親へ電話し、「今から確認の練習をしよう」と伝えたうえで、一度だけ流れを試してみます。
練習では、次の3点を確認すれば十分です。
- 親が質問を思い出せるか
- 家族が答えた後でも電話を切れるか
- 登録済みの番号へかけ直せるか
間違えても責めず、難しかった部分だけを簡単にします。親を試すための練習ではなく、家族全員が同じ手順を覚えるための確認です。
合言葉を変更したときは、家族全員へ個別に伝えます。メールやメッセージだけで一方的に送らず、本人同士で確認できたかを確かめましょう。
親子で一度だけ確認する5項目
- 親から家族の名前を先に言わず、相手に名乗らせられるか
- 合言葉の答えを親から口にせず質問できるか
- 答えが合っても電話を切れるか
- 登録済みの番号を選んでかけ直せるか
- 本人につながらない場合の次の相談相手が決まっているか
できなかった項目があっても親を試したり責めたりせず、合言葉をやめて「一度切ってかけ直す」だけのルールへ簡単にします。
今日することは、親と10分だけ電話ルールを話す
まずは親へ電話し、「家族を名乗る電話でも、一度切っていつもの番号へかけ直そう」と伝えてみてください。
そのうえで、親が負担なく使えそうなら、短くて推測されにくい合言葉を一つ決めます。合言葉を決めることより、電話を切って確認するところまで話せたら、今日の備えとしては十分です。

